スナック無宿 ~10 Dollars(新橋)~

その時の雰囲気を肌で感じて歌う曲を決めろ。デンモクの履歴なんかに頼るな。

過日、友人と久しぶりに新橋で飯を喰うことになり、肉メインの店にピットイン。 互いの近況や下衆い話をつまみにカップ酒、ホッピーなどを全力で注入した後に、「さ、行きますか」ということになり、夜街へ。 新橋や歌舞伎町なんかだと店の数が多すぎて、どこの店が良いのか、またどこの店に行ったことがあるのかがさっぱり解らない。 基本的に自分の足と嗅覚で探すのが醍醐味の一つだと思っているのだけれども、終電まで残り1時間のど平日にそのような余裕はなく、焼き鳥のスモークの中から現れたキャッチの兄ちゃんに、老舗っぽいスナックを紹介してもらった。

1時間1本勝負。3000円。

暗めの店内では既にグループ客がワインレッドの心を歌い、酔いしれていた。

聞くと、採点マシーンで93点を出すとボトル1本プレゼントのキャンペーン中であった。

連れが先だって歌を入れ、俺も入れた。店は先ほどの玉置の効果もあってか、いい感じに温まっている。 こういうときは、口開けに世良が効く。ノレるし、曲も短いし。というか口開けはいつも、世良な気がする。

youtu.be

そこから、連れの福山、玉置グループの奥田民生、俺の松山千春みたいな流れになり、向こうもこちらを意識しつつチーム戦の様相を呈したような気がする。よく覚えていない。

youtu.be

結局誰一人として93点に到達できず、ゲームセット。

その後、黒ドレスのチーママに橙色のスーツを着用したママを紹介していただき、皆で談笑。

綺麗なチーママと笑顔が良好なママでございました。

instagramでスナック投稿やるから写真撮っていい?って許可もらってたのに、一枚も写真撮っていなかった。

陰古亭円座師匠の憂鬱

今年の体調の悪さったら半端じゃない。

正月三日目にして早くも高熱を出し、一月末には急性胃腸炎。 二月頭は背中が肉離れして呼吸するたびに痛かった。二月末は再び腹痛。ノロウイルスだった。 三月、ぎっくり腰バージンをロスト。 四月、五月は自律神経系が乱れ、経験したことない眩暈で駅のホームに落ちそうだった。 そして六月に入ったばかりの先日、扁桃腺をやられた。 唾液を飲み込むのも辛い。おそらく熱もある。

生霊か何かに呪われているんじゃないかな。と思ったけれど、そうではない。

そう、俺は気がついてしまった。

年齢によるもの、なのでは?

元来、身体が強い方ではないし、なんならむしろそこはかとなく弱い方ではあったけれども、ここまで連続でダメージを受け続けるほど虚弱児ではなかったはずだ。きっと。

気持ちだけがずっと10代後半〜20代前半で止まっている。 確実に体は老いているのに。

相変わらず呆けた顔でスナックをロックしては、アルコールを飲み散らかし、「運動すると体調崩すのよねぇ、体質的にぃ。」などと嘯き、極力汗を書かないように、息が切れないように生活している。そういえば、腹回りの脂肪は成長著しく、酒を飲んで記憶を無くすことも多くなった。

このままではいけない。

俺は死ぬまで遊んで暮らしたいのだ。呆けた面で昼から酒を飲んで、酒焼けした声で世良や河島英吾を歌いたい。場末のお姉ちゃんをからかい、軽薄なアティチュードでアバンチュールなヴァケィションみたいな感覚で生きていたい。 そんなふしだらで美しい生活を、不健康ごときに邪魔される訳にはいかないのである。

俺は一念発起して、人生で初めて健康に関する記事を読み漁った。もちろんプリン体ゼロのホッピーを飲みながら。

そこで得た知見を要約すると次のようになる。

  1. 糖質は悪だ。
  2. 筋トレをしろ。
  3. 大酒は飲むな。
  4. 夜は寝ろ。

一つずつ見ていこう。

1. 糖質は悪だ。

猫も杓子も糖質制限と言うのが今の一種の流行・常識らしい。 糖質というのは、その名の通り糖分であり、「米」「麺」「パン」「麦酒」「ハイチュウ」「アクエリアス」など、糖分が含まれるもの全てが対象となる。

matome.naver.jp

お察しの通り、全て主食に使用される食物である。 つまり。 糖質制限とは「甘さ控えめ」とか「カロリーオフ」とかそういう生易しいレベルではない。 米とか食うなよ、食ったら殺す。え?ピザ?ラーメン?ぶっ殺す。という気狂いじみた教義なのである。 でも、如何に気狂いじみていようと仕方ない。夢見るふしだらでデカダンスな未来のためだ。俺はこれを実践せねばならない。

2. 筋トレをしろ。

matome.naver.jp

Fuck。この世で一番無駄で寂しい行為じゃないか。 自分で自分を痛めつけて、マッチョに育った自慢のボデーにウットリするなんて、俺の倫理観からかけ離れている。 何もかもふざけてる。 でも、どれだけふざけていようと仕方ない。理想的に怠惰で爛れた生活のためだ。 俺は朝晩、大股を開いてスクワットをする。スポーツジムの入会手続きも終えた。

3. 大酒は飲むな。

matome.naver.jp

俺はな、ムスリムじゃねえんだよ。豚串食いながら金宮のチューハイ飲むのが生きがいなんだよマザファッカ。 大体において、煙草も酒も大人の嗜好品なんだよ、「健康」みたいなあやふやなものを盾に偉そうに人の嗜好に口出してんじゃねえよ、猿。 と思ったけど、イライラするのは良くない。 どれだけ理不尽なことでも死ぬまで元気に酒宴を繰り広げるためだ。俺は毎週休肝日というものを作る。文字通り缶ビールすら飲まない日を。

4. 夜は寝ろ。

zi-gen.com

夜に生きる。それでこそ漢じゃないか。ハードボイルドじゃないか。 楽しいことは全部夜に起こるのが、都会の醍醐味なのがわからないのか。白痴め。 俺はな、ネオンと共に生き、酒瓶を抱いて死ぬんだよ。そのために、過度な夜更かしはしない。肌とか荒れるから。遅くとも1時までには寝る。

以上だ。全般的に狂っているとしか思えない内容だが、仕方がない。俺はこれを毅然と実践する。 怠惰でふしだらな美しい生活を死ぬまで送るために。

SlackとGASを使って画像取得BOTを作った話。

突然ですけど、皆さんSlack使ってますか? いいですよね。Slack。洒落てますよね。

今日は義憤に駆られて、SlackとGoogleAppScriptを使って画像取得用のBotを作ったので、その話をしたいなと思います。 欲しい画像をつぶやくと、Google先生から画像を検索してくれてSlackに貼り付けてくれます。

背景

画像レスの応酬が流行していた。 人よりも面白く、小気味よく、洒落ている画像を探そうと必死になっている感じが、非常にうすら寂しく、また気恥ずかしいものであったので、こっそりslackに投げかけたら画像を持ってきてくれる、そんな女性が必要であった。

完成品

画像取得BOT「chikako」

f:id:steroid66:20170515165039g:plain

つくりかた

今回は、GAS(Google App Script)を使って作りました。サーバーレス超便利。 GASについては、こちらの記事の説明が詳しかったです。

tonari-it.com

下準備

まずは、script.google.comにアクセス。新しいプロジェクトを作ります。

f:id:jmty_tech:20170515142120p:plain

次に、Slack連携用の便利なライブラリを入れます。その名もSlackApp。 リソース→ライブラリを選択して、この画面を表示します。

f:id:jmty_tech:20170515143046p:plain

ライブラリ追加のテキストフォームに以下のLibraryKeyを入力後、追加ボタンを押します。 M3W5Ut3Q39AaIwLquryEPMwV62A3znfOO

するとこうなるはず。 f:id:jmty_tech:20170515142649p:plain

次に、Slack側の設定をします。 まずAPI Tokenを取得します。以下のサイトのAuthenticationから取得できます。

api.slack.com

トークンを取得後は再びGASの画面に戻ります。 ファイル→プロジェクトのプロパティ→スクリプトのプロパティからSLUCK_ACCESS_TOKENプロパティの値に取得したトークンを貼り付けて保存します。

f:id:jmty_tech:20170515143620p:plain

最後にSlack側のWebHookを設定します。これでSlackに投稿したものをGASで受け取って諸々の処理ができるようになります。 今回設定するのはSlack側からの発信Hookなので、Outgoing WebHooksです。

f:id:jmty_tech:20170515144454p:plain

これですね。 設定項目は、次みたいな感じ。

f:id:jmty_tech:20170515144637p:plain

どこのチャンネルからの投稿かをChannelで設定して、GASアプリケーションの公開URL(後ほど設定)をURL(s)に入力すればとりあえずは動きます。

以上で下準備おしまい。実際にコードを書いていきましょう。

コーディング

GASはjavascriptで動きます。

function doPost(e) {
  var token = PropertiesService.getScriptProperties().getProperty("SLACK_ACCESS_TOKEN");
  var bot_name = "chikako";
  var bot_icon = "http://d1d7kfcb5oumx0.cloudfront.net/articles/images/567e361c4cc4ed91ee0001af/slide_PC190194.JPG"
  var channelId = "#chikako"
  var message = getGoogleCustomSearchImage(e.parameter.text);
  var slackApp = SlackApp.create(token);
  
  slackApp.postMessage(channelId, message, {username: bot_name, icon_url: bot_icon});
}

このdoPostメソッドが、Slackからのリクエストを受けて走るメソッドです。 tokenは先ほど下準備で保存したSLACK_ACCESS_TOKENのことです。 これで、channelIdで設定したチャンネルに、bot_nameで設定したbotとして、messageをPostできます。

今回は、このmessageを、getGoogleCustomSearchImageというメソッドで検索した画像のURLにします。(Slackは画像URLを貼ると、画像を表示してくれます。)

function getGoogleCustomSearchImage(keyword){
  var API_KEY = "AIzaSyB6hOUmDt3HeiGgd5oeBywz0CNpGv-3tJ4"
  var CSE_ID = "017523893900893021997:fzxbxcm7sus"
  var uri = "https://www.googleapis.com/customsearch/v1?key=" + API_KEY + "&cx=" + CSE_ID + "&q=" + keyword + "&searchType=image"
  
  var response = UrlFetchApp.fetch(uri);
  var json = JSON.parse(response);
  var random_params = Math.floor(Math.random() * json["items"].length);
  
  var result = json["items"][random_params]["link"]
  return result
}

getGoogleCustomSearchImageメソッドではGoogleCustomSearchEngineを利用して、画像を検索しています。

この記事を参考に、API_KEYやCSE_IDを取得 ryutamaki.hatenablog.com

あとは、Slackからパラメーターとして受け取った文言を検索文字として、クエリ付きのuriを作ります。(searchType=imageとすることで画像検索ができます。)

json形式で取得できたら、毎回同じ結果が出るのを防ぐために乱数を作って(random_params)、取得した結果をシャッフルして、該当画像のURLを返しています。

どうですか。出来ましたか。出来たら公開しましょう。

公開

公開→ウェブアプリケーションとして導入を選択します。 以下のような画面が出てくると思います。 f:id:jmty_tech:20170515152537p:plain

ここで注意点が二つ。 GASではコードの中身を変えた場合、プロジェクトバージョンをいちいち更新しないと変更が反映されません。 なので、このバージョン数値の更新を忘れないこと。 もう一つはアプリケーションにアクセスできるユーザーを「全員(匿名ユーザーを含む)」に設定すること。これを忘れて、悲しい時間を過ごしました。 f:id:jmty_tech:20170515152935p:plain

以上がchikako作成の流れでした。 皆さんも心のスキマを埋めるべく、可愛いbotを作ってみてはいかがでしょうか。乾いた日常がほんの少し潤いますよ。 それでは、 f:id:steroid66:20170515163805p:plain 御機嫌よう。

ルート66

12月の頭に暖房が壊れてね、うん、僕の部屋のエアコンなんだけども。

スイッチを押してもウンともスンとも言わないんだ。

ウンとかスンとかって言うけど「うん」はわかる。イギリスで言うところの「イエス!」ソビエトで言うところの 「ダー!」だよね。 「スン」って何?「スンッ」って感じの女子がたまにいるけど、その「スン」?それとも何か他の言語?「SUN?」「寸?」

まあ、 どちらにせよエアコンだから、ウンもスンも言わないんだけれど、せめて何か、そよ風みたいのでもいいので、返事をして欲しかった。

と、願った矢先に、吹いてきたそよ風。

外気が直で部屋の中に入ってきてるよね?って感じの冷風。

コンチャース!コンチャース!って家主の許可無く入ってくる冬の息吹さん。

無言でスイッチを切った私は、押入れの奥底に眠っていたハロゲンヒーター(2005年製・射程距離30cm)を引っ張り出し、暖房器具として使用している。

そんな中、先週末からの「最強寒波到来」。

ただでさえ、我が家は壁が薄く木造で、ゴールデンウィークあたりでも、ヒンヤリとするような寒冷地だ。とても射程距離30cmのハロゲンヒーターだけでは太刀打ちできない。

それでも、「贅沢は敵だ」という精神をモットーに金宮焼酎の湯割りとかを体内にブチ込みつつ、耐えた。耐え難きを。忍んだ。忍び難きを。

昨夜のこと。

珍しく人から貰った黄猿という珍妙な名前の芋焼酎があったので、キャキャ、ラッキーラッキー、乙類!乙類!なんて文字通り猿、エテ公のように喜びながら、ハロゲンヒーターを股座に設置し、湯を沸かしながら裂けるチーズを喰らっていた。ピイイイピイイイイイイイイイイと薬缶がけたたましく喚くので、お湯が沸いたことを確信した俺は、薬缶を手に取り湯呑みの7分目まで湯を入れる。焼酎のキャップを開いて勢いよく入れる。途端に湯気に乗っかって鼻腔に届く、芋の香り。

ここまで、15秒。まったく無駄のない動きに我ながら感銘を受け、割り箸で二、三度かき混ぜ、ズズッと胃袋にぶち込んだ。

「美味しい」

冬場の湯割りほど効くクスリはあるまい。などと呟きながらチーズを裂いては、焼酎。チーズを食べては、焼酎。の流れで気がつくとボトルは半分ほどになっていた。体もポカポカ。心もポカポカ。テレビでは無教養鬼畜国家の大統領候補が喚いている映像が流れている。

ここで、ふっと、股座のハロゲンちゃんのことに気がついた俺ちゃん。

あれ?消しちゃってた?なんだか静かな色合いだけども。 え?聞こえてる?ハロゲンちゃん? スイッチ入ってるよね?ハロゲン?ハロ?ハロ?

というやり取りを深夜0時をまわった東京で何回か繰り返した俺は、およそ15分後、ハロちゃんがご逝去なされたことを確信した。

「絶望」

今まで陽気でポカポカしていた俺の身体は一気に冷え、ハートはフリーズ。 殺人直後の犯人の如く、毛布を頭まで被り、震えながら朝を迎えたのだ。

あの部屋に帰りたくない。春が来るまで冬眠したい。

スナック無宿 ~らくがき(五反田) ~

子供の頃からスナックが好きで、良い大人になった今でも勿論好きだ。 スナックの醍醐味は何かと問われると、そりゃ人それぞれあるだろうし、一言でまとめることができるならスナックになんて通っていない。

五反田には、リバーライトビルと云う名前のビルが目黒リバーのリバーサイドにあって、通称「五反田ヒルズ」と呼ばれている。 f:id:steroid66:20170115160421j:plain

こんな感じで飲食店がひしめき合っているドーム型のビル。

勿論、めし屋も飲み屋もあるのだけど、テナントの内のその殆どがスナックと云う感涙モノのビルヂングだ。 で、結構個性的な店とか看板を見る限り胸躍る雰囲気の店とか色々あるんだけど、年の瀬も迫った金曜の夜、こちらにお邪魔した。

「スナック らくがき」

看板には女子会歓迎とか書いていて、価格もリーズナブル。

早速入店。

まだ19時台だったが、すでに男女の団体がずらっと座っていた。 ママに誘われて、一番端のカウンターにピットイン。

ママの名前はようこ。

「酔う子って書くの」というママのスナックジョークが出たところで、良い店と確信した俺は、迷わずキンミヤのボトルを入れた。

団体さんは合コン的なノリで会社の上司に連れてきてもらったという感じの3対3 + 上司で、上司以外いまいち盛り上がっていない。 すると、ママが場を盛り上げようとしたのだろう。自ら先陣を切り、カラオケを入れた.


The Beatles - Hey Jude

言わずと知れたビートルズのバラードをなんの脈絡もなく突然歌い始めるママに一同唖然。俺も唖然。

しかしそこはスナック・マジック。

ママのHey,Judeを皮切りに、若者たちも一人また一人と歌を歌いはじめ、俺も歌い、場は一体感に包まれ始めた。

これが、スナックの良さ、醍醐味の一つだと俺は思う。

なんとなく良い感じになった若者たち団体が帰り、俺も気分が良くなったので、キンミヤを飲み干してから帰ろうとママと談笑。 聞けば、五反田に来る前に働いていた店と俺の良く行く店が近く、共通の知人もたくさんいることが発覚。

運命を感じた俺は必ずまた来ることを約束し、店を後にした。

余談だが、Hey,Judeはポールマッカトーニーが離婚問題でもめていた頃のジョン・レノンの息子を励ますために作った曲とされていて、それを知っていて選曲したのなら、ようこママの妖力に感服する。(その頃、ジョン・レノンはヨーコ・オノに夢中だった)

黄金町エレジー

2007.1

その日の横浜は雪だった。

俺は、スーツにロングのダウンジャケットを着込んで、横浜のダークサイドと名高い黄金町・日の出町エリアの路上でビラを配っていた。

まだ松の内だったと思う。

正月に故郷へ帰る金子も無く、かといって特別親しくしてる女もいなかったので、アルバイトのシフトを元旦から連続で入れていたのだ。

「映画、いかがっすか。」

潰れかけた単館系の映画館でのバイト。時給850円。 あまりにも客が来ないために、映画のチラシを路上で配るという、映画館スタッフの仕事としてはあんまり考えられない、と言うか普通はやらない仕事を、新年のお祝いムードで溢れる伊勢佐木モール、その丁度裏通りでやっていた。

「明けましておめでとう」

声をかけてきたのは、タケさん(自称)。

隣のファッションヘルスで客引きをしている40代男性だ。 何せ人もほとんど通らない通りで、二人だけで呼び込みしているのだ。3ヶ月を過ぎる頃には、自然と顔なじみになっていた。

俺も新年の挨拶を返し、「全然、人通らないねえ」なんて話をしていた。

向こうはヘルス。こっちはシネマ。

小さい映画館だったが、サブカル女子やヴィレッジヴァンガードが好みそうな映画をやることがあって、女優がきて舞台挨拶なんてのもやった。そうすると、いつもは、地元のアル中が寝るためにしか来ない映画館に、行列ができることもあった。 そういう時、タケさんは隣の店先で、自分のことのように喜んでいた。

タケさんは自分のことはあまり話さなかったが、北陸の出身らしく諸々あって今の店で働いていると言っていた。

40代(自称)にしては禿げ上がった頭、人の良さそうな団子鼻、ヘルニア持ちで、立っているのが辛いと愚痴をこぼすタケさんが俺はなぜか好きだった。思えば、俺もその当時、信頼できる友も女も金も無く、自尊心と羞恥心だけが肥大化していて虎になりそうだった。二人とも孤独だったのかもしれない。

日が沈みかけてきた頃、雪が舞い始めた。 俺も北国の産まれだしタケさんも北陸の出だから、雪自体は大して感動もしないのだけど、その日はなぜか黄金町に舞う雪が非常に綺麗に見えた。 タケさんもそう思ったのか、「にいちゃん、雪だな」なんて笑っていた。 タケさんは前歯が殆ど無かった。シンナーだと思う。

そうして、閉館の時刻になり、本日の入場者と売り上げをエクセルに打ち込む。もちろん本日打ち込む数字は0だ。 館内の清掃も必要ないので、シャッターを閉め、俺は戸締りをして映画館を出た。

外に出ると、ビラを配っていた時よりも本格的に雪が降っていて寒かった。

ヘルスの前を通ると、タケさんはまだ立っていた。

「にいちゃん、帰りか?」

はい、お疲れ様です、と答えると、寒そうに肩を窄ませながら、タケさんはポケットから何かを取り出して

「はい、これ、お年玉。」

と言い、俺の手に何か握らせた。

見てみると、「お年玉キャンペーン!! 50分コース50%OFF!! アンド 指名料無料!」と書かれた、割引チケット。

「あ、ありがとうございます!タケさんも風邪ひかないように!」

よくわからないお礼を言い終えると、俺は酒を買い、自宅へ帰った。

タケさんの姿を見たのはそれが最後だった。

1ヶ月後、俺は割引チケットを握りしめ、黄金町へ向かった。

シフトには入っていないが、無料指名を入れるために。

50分5500円のアトラクションを終えた後、俺は指名の子に聞いた。タケさんのことを。

「客引きの?ああ歳いってる方?ハゲの?」

そう、その人がくれたお年玉なんだよ、今日のこれは。と思いながら、今、どうしているかを尋ねた。

「店の売り上げ金盗もうとしてんのがバレて、クビだって。バカだよねぇ。キャハハ。キャハ。」

女の顔も源氏名もオッパイの大きさも全く覚えていない。

ただ、何か無性に腹が立って、帰りにワンカップ大関を買い込み、飲みながらフラフラで自宅まで徒歩で帰ったことは覚えている。

あの日の横浜は雪だった。

師走焼酎奇譚

2013.12

焼酎が嫌いだと女は云った。

俺はまあ、焼酎に限らずアルコールが入っていれば何でも良くて、と言うか結局酔えれば言い訳だからね。 でも、焼酎、好きなの。特に冬場の湯割り。 梅干しなんて落としてね、割り箸とかでこう、グシャグシャってする様とかもう、たまんないじゃない。体も暖まるしね。

で、その日、俺は新宿にいた。しかもアルタ前に。 ちょうど「笑っていいとも」が終了して、全国民が「失って初めてわかるタモリの大切さ」を味わっていたようないなかったような時期だった。 19時に会うはずの女は19時30分をまわっても現れず、おまけに雨が降ってきた。 先週末、初めて入ったスナックで隣り合わせになった、いくらか年増の女に「新宿ぅ、うち近いからぁ、飲みにいこうぅよぉぉ」などと言われ、阿呆面下げて「おっっけぇえぇええ!!」なんて云った結果がこれだ。名前どころか顔すらまともに覚えていない。

腹も減り、体温も下がり、そろそろ自分に対する怒りと情けなさで奇声をあげそうになってきた俺は、歌舞伎町にある安居酒屋に行くことにした。

まずい枝豆。サーバー洗ってるのかな?っていう感じの味わいがする生ビール。 それらをやりながらタバコを吸っていると、俺のテーブルの斜め前の席に、客が通された。

良い感じの女だった。

たった今、顔も名前も覚えていない女に深夜交わした約束をすっぽかされたばかりの俺は、その何だろう、性欲とはまた違う、こう、後悔と挫折と愛と欲望と部屋とワイシャツとみたいな感情が入り混じっていて、その、「どうにでもなれ」という思考回路に支配されていた。 気がつくと、女の座席に近寄っていた俺は「お姉さん、お一人ですかぁ?」「今日は一人で飲みたい気分だったんですけどぉ、いざ飲んでるとやっぱり寂しくなってきてぇ、良かったら一緒にどうですかぁ?」などとわざと馬鹿な男のフリをして声をかけた。

馬鹿なフリをしたのは他でもない。自分を傷つけないためだ。 普段やりもしないナンパ行為を行い、そうして断られた時に、あれは馬鹿な下賎な男、ダーツやって、テキーラショットを罰ゲームで飲んだりする奴らのフリをしたからであって、本来の、仕事もせず、ぶらぶらと酔いつぶれている粋でおませな俺ちゃんだったら成功していたはず、と心の中で思いたいがための痛々しいポーズであった。

ところが、予想と言うか俺の杞憂に反して、女は俺の顔をしばらく見つめ、OKと言いやがった。

俺は嬉しくなって、つい本来のぶらぶらと酔いつぶれている俺ちゃんになって話しまくった。 女は見た目によらず、意外とノリが良く、と言うか途中から向こうの方が俺よりもハイ・テンションになって話し続けた。 ハイボール、バーボン、日本酒と飲み続け、好きなチャゲアスの曲や、清春のカリスマ性、90年代のドラマやら、竹内と反町のコンビの不動さなどを話したような気がする。

もう、今夜は貰った。 そう確信した俺は、二軒目どうする?を発動。女も予想通り、カラオケ行こうよなどと抜かす有様。 決めてやった、決めてやったよ、今夜。 そんな喜びを顔には出さずに、「オッケーェェ」などと阿呆面を晒して返事をした俺は、最後にキメの芋焼酎ロックを頼んだ。

瞬間。

女は「私、焼酎嫌いなんだよね。」と言い放ち、先ほどまでのマシンガントークが幻のように何も話さなくなってしまった。 赤らんでいた頬も青ざめ、クルクル変わっていた愛嬌のある表情も全く動かなくなった。LIke a 能面。 こちらが何を話しても、先ほどとは人格が変わってしまったような気のない相槌。焦点の合わない視線。 そうしているうちに、俺の方も何やら「怖い」というか「気味が悪い」ような気がしてきて、あ、この女やべえな。というか帰りたくなってきた。

芋焼酎のロックでぇす」と中国人のバイトの女の子がテーブルに芋焼酎ロックを置きにきた。 女はジッとテーブルの上のロックグラスを見つめ、目線を動かさない。 そして、一言「私、焼酎嫌いなんだよね。」と呟くと、すっと席を立って店を出て行った。

一人残された俺は、やり場のない気持ちをどう処理していいか分からず、飲んだ。ただただ飲んだ。

芋焼酎のロック、麦焼酎のロック、栗焼酎のロック。 米焼酎の湯割りを飲みながら、意識が無くなり、気がつくと自宅の玄関先。 靴を枕に反吐まみれの状態であった。

狐につままれたような夜を思い出しながら、今夜は芋焼酎のロックを飲んで、一人、体を温めているよ。